ポリッシュとシンメトリーの評価方法
ダイヤモンドのポリッシュとシンメトリーを見極める
ダイヤモンドの輝きは、ほぼダイヤモンドのプロポーションによって決定されますが、ポリッシュとシンメトリーと呼ばれるカッティングの細部も重要なチェックポイントです。以前よく使われたポリッシュとシンメトリーを合わせたフィニッシュは、宝石顕微鏡を使わずに肉眼でダイヤモンドを見た場合、見た目の影響はほとんどない場合が多いです。ただし、インクルージョンのない「フローレス」ではポリッシュとシンメトリーはクラリティグレードに影響を与える重要な項目です。対して、インクルージョンがはっきり目立つクラリティグレードではポリッシュとシンメトリーがダイヤモンドのグレードと価格に与える影響は少なくなります。ポリッシュとシンメトリーが研磨後のダイヤモンドの価格に与える影響は、4Cのカラットとカラー、クラリティとは異なります。カラットとカラーとクラリティはダイヤモンド産出の自然界の希少性に影響をうけるからです。プロポーション(カット)は研磨後のダイヤモンドの美しさに影響があり、原石からの重量歩留まりを反映します。ポリッシュとシンメトリーの項目は、研磨の時間、設備、ダイヤモンド研磨職人の熟練度といった要素が価格に影響されます。
- ポリッシュ(研磨)
- ダイヤモンドのポシッリュとは、ダイヤモンド表面の研磨状態を検査する項目です。モース硬度の高いダイヤモンドの鮮明な反射と透過光を得るためには、ダイヤモンドをよく研磨しなければなりません。研磨状態のよくない石は、鈍くぼやけたり、白濁して見えることがあります。たとえプロポーションの良好な石でも研磨が良くなければ美しく輝きません。
- シンメトリー(対称性)
- シンメトリーは、カットダイヤモンドの対応する各ファセットの位置が対称的でその形が正確であることを意味する。58面ラウンドブリリアントのファセット図は、テーブルが8角形で、真上(フェイスアップ)から見た際に外形(ガードルの輪郭)の中心にあり、歪みのないベゼルファセットとスターファセットであること等が理想。
ポリッシュとシンメトリーと、プロポーションの評価をあわせて総合的にカットグレードが判断されます。
ポリッシュ項目(研磨の状態)
ポリッシュのカテゴリーで扱う特徴は、クラリティグレードに影響を及ぼさない軽度のブレミッシュを含みます。*ベアデッドガードルはポリッシュではなく、インクルージョンとして扱う場合もあり、クラリティとして考慮しない際はポリッシュ項目に分類されます。
- アブレージョン(Abrasion : ABr)
- ファセット稜線部に沿った小さな欠け(白い点々)又または摩耗で、ファセットエッジが鋭くならずにぼんやりした白線に見える。アブレージョンは他のダイヤモンドと一緒に保管された際に、ダイアモンド同士が擦れてできる場合があります。
- ニック(Nick : Nk)
- ガードル上の小さいくぼみ。
- ピット(Pit)
- 極小の穴(開口部)、または非常に浅いくぼみ。白色の小さな点に見える。
- ポリッシュライン(Polish Line : PL)
- 研磨の時についた、1つのファセット面の細かな平行線。ポリッシュラインは、ファセット一面ずつに異なった方向に出来る。
- ポリッシュマーク(PM)
- 結晶のゆがみや研磨時の加熱により生じた表面の白色の曇りまたはむら。バーンマーク(Burn Mark)と呼ばれることも多い。
- スクラッチ(Scratch : S)
- ダイヤモンドの表面を、別のダイヤモンドでこすった場合にできる白い筋(引っかきキズ)。研磨の際の研磨ラップ(ダイヤモンドを磨く際に使う高速回転する研磨台)がデコボコで傷がつく場合もある。通常、細い白線のワン曲線または直線として見える線状のくぼみ。
- ラフガードル(RG)
- 擦りガラス状、または角砂糖ようなガードルの表面。ピットのあるガードル表面で、チップもある場合が多い。最近の婚約指輪用ダイアモンドのガードルは、ファセット仕上げがほとんどです。ラフガードルはファセットに比べ、油分や汚れがたまりやすく、黒ずみやすいです。
- *ベアデッド ガードル(Bearded Girdle : BG)
- ブルーディングした際にできるガードルから内部に伸びる小さなフェザー。ベアディングの顕著なダイアモンドは、フェイスアップから見ると、ガードルが白っぽく見える。*ベアデッドガードルにプロットシンボルはなく、ポリッシュ項目としてとらえます。
シンメトリー項目(対称性)
ダイヤモンドのシンメトリーとは、対象性に関する評価項目。きちんと真ん丸(真円)か、ファセット(平面)の先端がきちんと合うか、テーブルが八面体かなどを検査し判断した項目。明らかに円形でないガードル輪郭や傾いたテーブル面のずれは、原石からの重量損失を少なくしたことを示します。このようなシンメトリー特徴はプロポーションの変化として考えます。
- オフセンター テーブル(Table off-center : T/oc)
- 8角形のテーブルファセットがガードル輪郭の中心からずれているもの。
- オフセンター キューレット(Culet off-center : C/oc)
- 上記同様にキューレットがガードル輪郭の中心からずれているもの。歪んだダイヤモンド原石から重量歩留まりを優先してパビリオン角度を変えて石取りした際にできる。
- 歪んだ円のガードル輪郭(Out-of-round girdle outline : OR)
- 円形でないガードル輪郭。
- 歪んだファセット(Facets not properly pointed : Ptg)
- 先端のあっていないファセット。
- アライメント(Misalignment of crown and pavilion facets : Aln)
- クラウンとパビリオンのずれ。
- 正しい8角形でないテーブル(Table not a regular octagon : T/oct)
- 正8角形でないテーブル
- ゆがんだファセット(Misshapan facets : Fac)
- ゆがんだファセット。
- 平行ではないテーブル面とガードル(Table and girdle not parallel : T/G)
- 平行ではないテーブル面とガードル
- 波状のガードル(Wavy girdle : WG)
- 波打ったガードル。
- ナチュラル(Natural : EF)
- 未研磨のまま残ったダイヤモンドの原石表面。ナチュラルはガードルを厚くも薄くせず輪郭にも影響を与えずにガードル上にのみ存在するのであれば許容されます。*ラリティグレードに影響するナチュラルはシンメトリー項目では取り上げません
- エキストラファセット(Extar Facet : EF)
- 58面の決められたファセット面より多い余分な研磨面で、ごく浅いキズを取り除くために研磨してできる。*クラリティグレードに影響するエキストラファセットはシンメトリー項目では取り上げません。