ダイヤモンドのプロッティング(PLOTTING)
ダイヤモンドの特徴や状態をメモするプロット作業
プロッティング(PLOTTING)とは、ダイヤモンドの特徴を示す決められた記号(シンボル)を用いて、ブレミッシュとインクルージョンを確認した位置とサイズを合わせてダイアグラムへ「プロット(記入)」することです。*ダイアモンド内部で反射して複数ににみえるインクルージョンは実態のみ記載し、反射したインクルージョンは記載しません。
- プロッティングする理由について
- ・他のダイヤモンドとの識別
- ・現在の石の状態を書類に残す
- ・グレード決定の裏付けと説明ため
- プロットするもの
- グレードを決定するインクルージョン、石の識別に役立つもの、状態を明確にする特徴を記載する。
- プロットする位置
- ダイヤモンドのクラウン側から見えるクラリティ特徴はすべてクラウン図に記載。ただし、パビリオン表面にある特徴と、パビリオン表面上に達したクラリティ特徴、あるいはパビリオン側からしか確認できない場合はパビリオン図に記載する。
- ガードルを通りクラウンとパビリオンにまたがるクラリティ特徴は、両方の図に記載する。
- プロット図に記載するシンボルの色分け
- 石表面のブレミッシュは、緑色。ダイヤモンド内部のインクルージョン項目のうち、キャビティ、ノット、レーザードリルホール、インデンテッド ナチュラルの4項目は赤と緑の2色を用いてダイアグラムへ記入する。その他インクルージョン項目は、全て赤インクで位置とサイズを記入します。
- エキストラ ファセット(EF)のみ例外で、黒インクの線で位置を記します。 また、鑑定はルース(裸石)の状態で行いますが、リングやペンダント等のジュエリニー加工されたダイアモンドは、おさえるプロング(爪)を黒インクを使い点線で記入します。
インクルージョンのプロット
インクルージョンはダイヤモンド内部、または表面から内部へ入り込んだ特徴のこと。
ダイアグラムにプロット記号を記入する場合は、「赤色」のインクで位置と大きさを示します。*キャビティなど一部のインクルージョンは「緑色と赤色」の両方を用いる。
- フェザー(Feather : Ftr)
- フェザーはダイヤモンドに生じる「クリベージ」と「フラクチャー」の2種類の割れを表す言葉。 クリベージは結晶方向に平行な割れで、フラクチャーは劈開方向以外の割れのこと。赤線でサイズと位置、形を記入する。
- インクルーデット クリスタル(Crystal : Xtl)
- ダイヤモンド内部に含まれたダイヤモンドやその他の鉱物体。位置と大きさを合わせて赤色で輪郭を記入します。
- ピンポイント(Pin Point : PP)
- 非常に小さな白色の結晶結晶。小さな赤色の点で位置を示す。
- クラウド(Cloud : Cld)
- ダイヤモンド内部にみられる全ての乳白色の曇り。赤色インクでクラウドの見える位置に薄い点で囲む。
- ノット(Knot : K)
- 研磨面(表面)まで達した内包結晶。緑色の輪郭の中に同じ赤色の輪郭で記入する。
- ブルーズ(Bruise : Br)
- ブルーズ(またはパーカッションマーク)は、強い衝撃によりダイアモンド表面にできるクリベージを伴う表面の砕け、またはくぼみのこと。位置に合わせて赤色でブルースのシンボル「 x 」を記入する。
- インターナルグレイニング(Internal Graining : IntGr)
- ダイヤモンド内部の不規則な結晶成長の跡。赤色の破線で記入します。
- キャビティ(Cavity : CV)
- キャビティは、ダイアモンドの位置にかかわらず、大きな穴、または深いくぼみのこと。キャビティは、緑色の輪郭の中に、赤色の平行線を記入。
- チップ(Chip : Ch)
- 通常はガードルエッジにある小さな欠け、または浅い穴のこと。
- インデンテッド ナチュラル(Indented Natural : IndN)
- カット済みダイヤモンドの研磨面より、内部に入り込んだ原石(結晶)時の表面(肌)。外側は赤色で、内側は緑色の2重線で表します。
- ニードル(Needle : Ndl)
- 細長い棒状の内包結晶。赤線と緑色(内側)の二重線で記入します。
- トゥイニング ウイスプ(Twinning Wisp : W)
- 育成途中の結晶のゆがみにより生じた曇り。通常は双晶面を伴うことが多い。
薄い実線に、数カ所きざみを入れて表す。 - レーザードリルホール(Laser Drill Hole : LDH)
- レーザー光線でダイヤモンド内部にまで穴を開け、目立つインクルージョンを処理するクラリティ改善を目的とした人為的作業。プロット図へは対応する位置へ緑色の丸に赤色の中心点で表します。
- *グレイン センター(Grain Center : GrCnt)
- 結晶構造の歪みが集中した部分。ピンポイントを伴う場合が多い。*使用されることの少ないシンボルです。
ブレミッシュのプロット
ブレミッシュとは、研磨済み第ダイアモンドの表面にみられる結晶面の残りや、研磨過程にる欠点を表す外部特徴を表します。ラボで保管するワークシートへはブレミッシュを「緑色」のインクで対応する位置に記入しますが、グレーディングレポートにはブレミッシュを記載することはほとんどありません。*ブレミッシュのうち、エキストラファセット(EF)は緑色ではなく黒の実線で記入します。
- ナチュラル(Natural : N)
- 研磨済みダイアモンドに残された、原石(結晶)時の表面(肌)。一本の線をナチュラルのある位置とサイズに合わせて記入する。
- エキストラファセット(Extar Facet : EF)
- ラウンドブリリアントカット(58面)など、決められたファセット面より多い余分な研磨面。エキストラファセット(EF)は、黒インクで記載する。
以下のブレミッシュ項目は、グレーディングした際に鑑定機関で保存するワークシートへはブレミッシュとして記載しますが、通常、皆様の見ることのあるグレーディングレポート(鑑定書)へは「識別特徴」以外のブレミッシュの記載ありません。
- ピット(Pit)
- 極小の穴、非常に浅いくぼみ。プロット図へは、緑色の小さな点で位置を記す。
- ニック(Nick : Nk)
- ガードルに見られるクリベージに沿った欠け、欠損部。ガードル方向へ向けて緑色で小さな「 v 」で位置を記す。
- サーフェイスグレイニング(Surface Grainning : SGr)
- 研磨表面にみえる結晶成長の跡(成長線)。確認できたグレインラインの方向に合わせて、緑色の破線で記入する。
- スクラッチ(Scratch : S)
- ダイアモンドの表面を、別のダイアでこすった場合にできる白い筋(引っかきキズ)。ダイアグラムに緑色の線で位置を記す。
- アブレージョン(Abrasion : ABr)
- ファセット稜線上の連続した小さな欠け(白い点々)又または摩耗。小さな緑色の点々で位置を記す。
- ポリッシュライン(Polish Line : PL)
- 1つのファセット面の細かな平行線。緑色の平行線で記入する。
- ポリッシュマーク(PM)
- 研磨の際の加熱により生じた表面の白色の曇りまたは焦げ。*ダイアグラムへの記載シンボルなし。
- ラフガードル(RG)
- 擦りガラス状、または角砂糖ようなガードルの表面。*ダイアグラムへの記載シンボルなし。
- *ベアデッド ガードル(Bearded Girdle : BG)
- ブルーディングした際にできるガードルから内部に伸びる小さなフェザー。プロット図の対応する位置とサイズに合わせて小さなフェザーを記入します。
プロット図の無いグレーディングレポート 図示省略
日本国内で流通するダイヤモンドグレーディングレポート(日本で一般的な鑑定書)のほとんどは、プロット図にクラリティ特徴も記載のない「図示省略」や、いわゆるルース写真や製品写真の写真付きレポートです。 日本ではプロット図を見慣れない方がご自分のレポートを見た際に、必要以上にダイヤモンドの品質に対して悪いイメージを持つのを避ける意味もあるように思います。
アメリカG.I.A.発行のダイヤモンドグレーディングレポートでも、1.0ct以下のダイヤモンドに多くみられる「ドシェ」タイプにはプロット図の記載はありません。
- アトリエトントンでプロットを保管しております
- アトリエトントンで販売するルースのダイヤモンドは、アトリエトントンの作成したプロット図を保管してあります。 単純に私が宝石鑑定士勤務の延長で、プロット図を作成しないと入れ違いや、状態の確認に不安があるためで、ダイヤモンド好き個人の趣味とダイヤモンド取扱いの者としてのプロ意識?の両面から作成しております。
- アトリエトントンでダイヤモンドを購入の方には、いつでもコピーを差し上げております。また、ご購入時にも、宝石専用顕微鏡とプロット図の両方でダイヤモンドを確認していただけます。
ダイヤモンドの品質を見分ける グレーディングの世界
ダイヤモンドのグレーディングレポートを発行する際に調べるポイント。検査項目や評価方法を簡単にご紹介します。婚約指輪用のダイヤモンドをお探しの際、新潟市のアトリエトントンにお越しいただければ、実際に宝石鑑定用の顕微鏡を使って、実査にダイヤモンドをご覧いただけます。